経営再建、MBA留学、そして起業へ【元Doughnut Plant Tokyo社長・D-matcha株式会社代表 田中大貴さん】

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アメリカベンチャー企業の風土ー尊敬と失敗ー

 

 話は変わりますが、アメリカ留学で得た重要な収穫のもうひとつは、アメリカのビジネス・サービス・市場について生活の中で触れられたことです。特にITの分野では次々と新しいビジネスが生まれ、それが瞬く間にアメリカ以外の国へと進出してグローバルスタンダードとなっていきます。

 

 いろいろな国の選ばれた優秀な人たちが一発当てようとアメリカンドリームに臨んでくるような環境の中で、ものすごい速度で新しいビジネスが山ほど生まれて、大きなお金がボンと投じられて、たまたま勝ち残ったやつが成功できる。

 アメリカにはそういうバックグラウンドがある上に、もともとインフラがあり、英語というグローバルに行ける利点がある。うまく行けば事業立ち上げて数年後には世界に行けてしまう場所なんです。

 一方、日本の場合まず国内の狭いマーケットで戦って、その後どこの国に進出しようかという議論が始まる。やはりこれでは同じ土俵では勝てないです。

 

-なぜアメリカではそれほど多くのベンチャー企業が生まれているのでしょうか。

 

 シンプルにいうと「ベンチャーをする人がかっこいい」というイメージだと思います。

 例えばアメリカの話をしますと…私、米国の話を良くしますが、何でも大好きなわけではなく比較の例として分かりやすいので挙げていますが…アメリカはベンチャー経営者・アントレプレナーに対するリスペクトが半端なく大きいです。例えばベンチャー企業が製造しているものを敢えて買うとか、そういうことをする人もかなりいます。憧れがあって、だから自分もなりたい、応援する。

 一方日本を考えると、いわゆる「いい大学」になるほど大企業がメジャーな就職先で、ベンチャー行く学生は変わっているという目もある。ここが根本的な差だと感じています。

 

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-弊社代表 左今:アメリカでのベンチャーの定義は何でしょうか?

 スクラッチでゼロから始めることだと思います。

-左今:フランチャイズオーナーはどうなんでしょう?

 ベンチャー経営者に含まれると思います。

例えば町中でホットドッグ売っている人…フードトラックを経営している人もアントレプレナーとみなされていますね。

 

 

-左今:投資について、ベンチャーが投資を受けて失敗した時のリスクはどうなっているのでしょうか?

 

 投資家がいっぱい付くので失敗してもそれが燃えるだけと思っているのではないかと思います。同時に起業家たちはいざという時の別の選択肢を準備しています。

 失敗について興味深く思ったのは、一つは、大抵のミスは失敗とみなされないのと、もう一つは失敗したことが評価されることです。これは本当で、ある有名なベンチャーキャピタルのパートナーの人は、「自分もパートナーになるために300億円燃やしてきた」と言っていました。

 その人の経歴を見ると本当にピッカピカなのですが、それでもこれくらい失敗しないと一流になれない、皆そう考えているんです。

 

-左今:日本のビジネス感覚で行くと失敗だけで人生終わっちゃいそうな額ですね(笑い)。

 

 そうなんです。

 ある人に「何でシリコンバレーでこんなにたくさんのベンチャーが生まれているの?」と聞いたことがあります。そうしたら、彼は「シリコンバレーには失敗への許容があるから」と言っていました。

 みんな失敗をすることが後々の価値だと考えているし、それを評価する風土があります。

 

-失敗しないと一流にならないという言葉には同意されますか?

 

 はい、かなり同意します。ずっと失敗しないでやっているという事は、新しいことに挑戦していないということだし、継続することに意味がある側面はもちろんあるけれども、僕自身は新しい価値を社会に提供する事におもしろさがあると思っています。

 

-左今:日本では、ベンターキャピタルは投資先ベンチャーの経営状態が良い時に投資するじゃないですか。

 そうするとベンチャーは資金調達できたから攻めるわけです。けれども攻めて赤字を出すと「小売業は基本的に黒字だからね」と言われることもある。

 ベンチャーからすると、新しいシステム作り出すのに黒字じゃなきゃいけないの、という。

 

 おっしゃる通りです。アメリカだと例えばアマゾンのように世界的企業でもほぼずっと赤字のケースもありますしね。

 

-左今:アメリカのベンチャーキャピタルは、社会に与える価値に対する評価をしていますよね。

 

 それはありますね。

 

-失敗とは田中さんのお仕事人生の中でどのようなものでしょうか。

 

 まず僕の中で「失敗」の閾値が、一般的に人が言うより高いという前提があるのですけれど、思ったようにいかなかったことを失敗と定義するならば、それは数え切れない程ある。

 もちろん会社が立ち行かなくなるような致命的なミスはダメですけれど、許容される範囲の中でいかに失敗を積み上げていくかが経営者には求められていると思います。

 

-「失敗を積み重ねる」の中には失敗から学ぶというプロセスが求められると思いますが、失敗から学ぶ作業について田中さんなりの方法はありますか。

 

 それはコンサルタントの時に培った考え方が効いているかもしれません。なぜ失敗したのかを整理して、じゃあどうするかを考える。思考の組み替えと整理です。

 あとは失敗について言うならば、基本的に始める前に何パターンかを考えています。これがダメだったらこっちの手法で、これが出来たらこっちで、とシュミレーションしておいて失敗に備えています。

 

 

これからの経済と経営について思うこと

ー「持続性のある資本主義」と日本式経営の可能性ー

 

-バブソン大学のMBAの学生たちは、ビジネスを通して社会にどのような価値や影響を与えたいと考えているのでしょうか?

 田中さんの中で印象深い点などありましたら教えてください。

 

 その点について言いますと、これはバブソンの学生に限らないのですが、最近いろいろな人に会って話す中でよく話題になったり皆意識しているなと思ったりするのは「サステナビリティ」という言葉です。

 アメリカはバリバリの資本主義の国ですけれども、一部の人たちはこのまま資本主義が続いていくときっとよろしくない方向に行ってしまうと気付いています。そのような考え方の中でキーワードになっているのが、サステナビリティ、つまり持続可能性です。

 教育機関の第一人者たちも、サステナビリティの思考はこれから会社の経営に携わる人たちが必ず知っていなければいけない教養だと考えています。そして既に大学などの講義のなかで社会についての理念・倫理として教えているんです。だから、そういう考え方の若い人・同じ年代の人が多いです。

 

-左今:今の回答のサステナビリティに関するところで、ちょうど今読んでいるのが榊原英資さんと水野和夫さん共著の『資本主義の終焉、その先の世界』(詩思社,2015)という本なのですが、ご存知ですか?

 まだ読み途中なのですが、資本主義の経済が今後どのような方向に行くかが議論されています。今おっしゃっていたのはそういう段階の話でしょうか。

 

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 直接的な答えになっているか分からないですけれど、より我々の身近なところでいうと、世界の経済としてこれからは、日本式の経営の考え方が主流になってくるんじゃないかと思っているんですよ。

 僕自身は資本主義が変わるとは到底思えないし、じゃあ共産主義がいいかというと絶対そうではないと思う。資本主義なんだけれど継続性や社会性…近江商人の三方良しじゃないですけれど、倫理性を持った資本主義というのが、これから大きく求められていくんじゃないかと思っています。

 先日、400年とか500年続いているという京都の老舗の経営者の方の話を伺う機会がありました。その時に特に凄いなと思ったのは、「経営において何が一番大事だと思いますか」と尋ねた時に「無駄を持つことだ」とおっしゃったんです。無駄があるから本当の危機が訪れた時に対応できる。

 確かに、資本主義では無駄は徹底的に叩いて無くせと言われますが、それを追及するとみんな疲弊してしまうんです。

 その時は外国の学生たち20人程も一緒にいたのですが、彼らも、この経営者の言葉は一番というくらい刺さっていました。持続可能な倫理性を持った資本主義、つまり京都の老舗や近江商人が持っていたような価値観の中での資本主義のようなものが、これからもっと求められていくのではないかと思っています。

 

-左今:僕もそんな気がしています。この本の中で特に刺さった文章があって、「民生品を過剰なまでに生産できる資本主義は、軍事品を過剰なまでに生産できる社会主義に勝利した」という言葉がありました。

 「今後資本主義が終焉するとしたら、次に来るシステムは計画経済や社会主義であると期待している人もいますが、それはありえないのです。この次に来るシステムは、生産力の増強を競うシステムではないからです。」と書かれています。

 

 まさにそうだと思います。このまま生産力を伸ばし続けても、歪みが溜まって社会がおかしくなってしまうじゃないですか。だから、どこかで方向の転換があると思います。

 そしてその転換点が持続可能性の考え方で、それを大事にしてきた日本式の経営手法が求められ始めると思っています。日本がアメリカのような資本主義社会に行ききれなかった故に、周回遅れで日本の時代が来たのではないかと(笑い)。

 

-左今:なるほど。そうすると、つまりある基準における生産性は上がっていなけれども、なにか付加価値が付いちゃうような状況になるということですよね。

 

 実際のところは分からないですが、ただ、なんかそういう潮流が変わりそうな感じはしていますね。

 

-これからどのような経済の転換があるのか楽しみです。

 田中さん、ありがとうございました。

 


 

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